フレームアレスター(逆火防止装置)とは、可燃性流体(ガスおよび揮発ベーパー)を扱うプラント、機器における安全装置として取付けられ、プラントの内外で起こった爆発の際に発生して伝ぱんしようとする火炎を消炎する装置です。火炎を消炎することにより二次災害の原因となる火炎の伝ぱんを防止することができます。

プロテゴ製フレームアレスターは、従来の手法である金網(メッシュ)構造の消炎素子ではなく、世界標準であるクリンプリボン(波板)構造の消炎素子使っているのが特徴です。金網構造の消炎素子は、消炎性能の低さと性能の曖昧さから過去の技術となり、現在では欧州、米国、アジアの各国で採用されることがなくなりました。クリンプリボン(波板)構造の消炎素子は、各可燃性流体を爆発強度別に分類したカテゴリー別に製品を試験・評価することを可能とする性能を有します。また、フレームアレスターの試験・評価はメーカー独自の確認後に専門の認証機関による確認と認定書の発行により初めて信頼できる製品としての地位を得ることができます。プロテゴ製フレームアレスターは、欧州防爆指令ATEXの型式認定を得ております。

用途と種類

フレームアレスターは設置レイアウトにより大きく分類されます。パイプラインおよび機器と機器の間など、配管の中に組み込まれるものはインライン・フレームアレスターと呼ばれ、配管または機器の末端およびタンクの大気放出部に取付けられ、落雷や外部の火災などによる火炎の侵入を防止するものは、エンドオブライン・フレームアレスターと呼ばれます。また、インライン・フレームアレスターには、プラント内で起こりうる爆発が、デトネーション(音速を超える爆発=爆ごう)、デフラグレーション(音速以下の爆発=爆燃)によって、炎のスピードや圧力波の威力が異なるため、用途に合わせた性能を有するフレームアレスターを選定する必要があります。

  • ▲インライン・フレームアレスター

  • ▲エンドオブライン・フレームアレスター

  • ▲製油所での爆発事故

フレームアレスターの用語説明

  • 瞬間燃焼

    可燃性ガスが瞬間的に放出された場合の瞬間的な着火を指す。ブリーザーバルブと組み合わせた場合などが、これにあたる。

  • 安定燃焼(stabilised Burning)

    瞬間燃焼とは違い、瞬間を超えて燃焼する状態で、1分未満の場合の燃焼を短時間燃焼と呼び、1分以上にわたり燃焼する場合を持続燃焼と呼ぶ。

  • デフラグレーション(爆燃)

    火炎の燃焼速度が音速を超えない状態の火炎。インラインの場合は、配管内を逆火する火炎の初期段階が該当する。エンドオブライン設置での外部からの火炎進入も、この燃焼速度となる。

  • デトネーション(爆ごう)

    配管内を逆火する火炎が、加速することにより発生する燃焼速度が音速を超える火炎。瞬間圧力は数10MPaを超え、瞬間燃焼速度は数1000m/sにもなりうる。衝撃波を伴い強力な破壊威力を持ち、一般的なデフラグレーション用フレームアレスターは火炎を通過させてしまう。

  • 爆発グループ

    可燃性ガスおよびベーパーが発生した際の危険度です。EN 12874では爆発グループをIIA〜IICと定めており、IICが最も危険度が高いグループになります。おおまかな分類としては、

    • IIA・・・プロパンガス相当
    • IIB3・・・エチレンガス相当
    • IIC・・・水素ガス相当

    ※詳しくは、別ページ、可燃物のクラス分類を参照ください。

  • MESG(最大安全すきま)

    Maximum Experimental Safe Gapの略称で火炎を消炎する際の消炎のしづらさを表すガス固有の値。MESG測定装置は、可変の消炎すきま機構を持ち、ガス毎にすきまを調節して消炎できる最大すきまを求めている。

  • クリンプリボン

    フレームアレスターの消炎素子部分の波板構造の部分。クリンプリボンは厚み10mm(標準値)の薄板状のディスクに巻かれ、1枚のフレームフィルターを形成する。このクリンプリボンのフレームフィルターを1枚以上組み合わせて、フレームアレスターに組み込んで使用する。クリンプリボンのすきまは、ガスに合わせて0.2mm〜0.9mmがあるが、MESGとは直接の関係はない。

    • MESG(最大安全すきま)・・・ガス固有の数値で、すきま(mm)で表される
    • クリンプリボンのすきま・・・フレームアレスターのクリンプリボンのすきま(mm)
    • (左)クリンプリボンの構造 (右)フレームフィルターを4段取付け例
  • フレームフィルター

    クリンプリボンの項目を参照

  • 最大可能運転温度

    最大可能運転温度はフレームアレスターが消炎可能な流体の最大温度。フレームアレスターは型式認定を取得する際に、この温度条件が必須項目となっており、この温度以下の運転条件で消炎が認定される。

  • 最大可能運転圧力

    最大可能運転圧力はフレームアレスターが消炎可能な下流側の最大圧力。フレームアレスターは型式認定を取得する際に、この圧力条件が必須項目となっており、この圧力以下の運転条件で消炎が認定される。下流側の意味は、ガスの流れのある配管で、フレームアレスターから見た下流方向に着火源があり、逆火により火炎がフレームアレスターに到達することを前提にしている。

  • 圧力損失

    圧力損失は流体がフレームアレスターを通過する際に、消炎ユニットのクリンプリボンで発生する圧力の損失のこと。爆発クラスや型式によってこの数値は大きく異なり、水素ガスのような消炎が困難な流体の場合、クリンプリボンの消炎ギャップ隙間がより小さくなるため、フレームアレスターでは圧力損失も大きくなる。上流側の最大可能運転圧力がフレームアレスターの運転許容範囲を超えていても、この圧力損失によって下流側が許容内にあれば、使用可能である。